育休の切り出し方と上司への言い方|申請を受ける部長の台本

育休の切り出し方と上司への言い方|申請を受ける部長の台本


📖 この記事の目次
  1. この記事でわかること
  2. そもそも、なぜ「切り出し方」で結果が変わるのか
  3. タイミング——法定期限は「最遅の日」でしかない
  4. いつ切り出すか、時系列で決める
  5. 相手——人事より先に、直属の上司へ
  6. 伝え方——「取れますか」と聞かない
  7. 代わりに、こう言う
  8. 言い切ることを怖がらない
  9. 申請を受ける側の本音——助かる言われ方と、困る言われ方
  10. いちばん困るのは、やはり「直前」
  11. 「権利なので」から入らないほうがいい理由
  12. もう一つ、上司側の事情を書いておく
  13. 引き継ぎ案テンプレ——業務を3つに仕分ける
  14. 書き出し方の手順
  15. 1枚メモの形
  16. 連絡ルートを、必ず1行入れる
  17. 渋られたときの返し方——3段階で、静かに
  18. 第1段階——「無理」の中身を1つに絞ってもらう
  19. 第2段階——会社側の義務を、事実として置く
  20. 第3段階——社外の窓口
  21. 双子家庭には、いちばん強いカードがあります
  22. 切り出したあと、必ずやる3つのこと
  23. よくある質問
  24. Q1. 妊娠が分かってすぐ言うと、早すぎませんか?
  25. Q2. 法律の期限ぎりぎりで言ったら、断られますか?
  26. Q3. 上司に「前例がない」と言われました。どうすれば?
  27. Q4. 上司が何も聞いてくれません。こちらから言うしかないですか?
  28. Q5. 「取ったら評価が下がる」と遠回しに言われました
  29. Q6. 双子だと言えば、期間は長く取れますか?
  30. まとめ:切り出し方は、才能ではなく型
  31. あわせて読みたい
  32. 出典

※本記事はプロモーションを含む場合があります。

「育休を取りたいのに、上司にどう言えばいいのか分からない。切り出す言葉が浮かばないまま、もう妊娠7か月です」

「一度『考えておいて』で流されました。次に何と言えば話が進むんでしょうか」

一卵性双生児のサクラとモモ(9歳)を育てている、39歳の双子パパ部長です。私自身は双子が生まれたときにまとまった育休を取って復帰した側で、いまは部下から育休の相談を受ける側の管理職でもあります。年に何度か「相談があります」と切り出される席に、机の反対側で座っています。

この記事は、制度の解説でも、取らなかった後悔の話でもありません。制度と給付金は双子のパパ育休はいつ・どれくらい取る?に、取らなかった場合の話は男性育休を取らなかった後悔に、それぞれ全部書きました。

ここで扱うのは、そのどちらにも書かなかった「切り出し方」だけです。いつ、誰に、何と言うか。実際に口から出す言葉のレベルまで落とし込みます。

結論から書きます。育休の切り出し方には黄金パターンがあります。「安定期に入ったら、直属の上司に、期間と引き継ぎ案をセットで出す」。この3点が揃っていれば、たいていの職場で話は前に進みます。

分解するとこうです。タイミング=妊娠を職場に伝えるのと同じ時期(安定期のころ)/相手=人事より先に直属の上司/伝え方=「取れますか」ではなく「この期間で考えています。引き継ぎはこの案です」。

法律上の申出期限は、育児休業が原則1か月前、産後パパ育休が原則2週間前まで(厚生労働省)。ただし、これは「言っていい最遅の日」であって「言うべき日」ではありません。受ける側の実感で言えば、期限ぎりぎりで来た相談ほど、希望の形から遠ざかります。

この記事でわかること

  • 育休を切り出す黄金パターン(タイミング・相手・伝え方)の中身
  • 法律上の申出期限と、実務で間に合う時期のずれ
  • 申請を受ける側から見た「助かる言われ方」と「困る言われ方」——セリフ付きの対比
  • そのまま使える切り出しの台本(直属の上司編・人事編・面談編)
  • 引き継ぎ案の作り方(業務を「止める・任せる・自分で残す」の3つに分ける)
  • 渋られたときの、角を立てない返し方の3段階
  • 会社側にある義務(個別の周知・意向確認/不利益取扱いの禁止)を、後ろ盾としてどう使うか
  • 双子家庭だけが持っている、いちばん強いカードの話

そもそも、なぜ「切り出し方」で結果が変わるのか

制度の知識をどれだけ集めても、最後は上司との会話を通ります。ここで詰まる人が本当に多い。

理由ははっきりしています。育休の相談は、多くの人にとって人生で1〜2回しかない交渉だからです。慣れていないのは当たり前で、練習する機会もありません。一方の上司は、部署によっては年に何度も受けています。経験値の差がそのまま、話の進み方の差になります。

だから、うまい言い方を「才能」だと思わないでください。型を持っているかどうかの話です。営業で言えば、初回訪問の入り方を決めていない人と決めている人の差に近い。台本があれば、緊張していても話は最後まで運べます。

もう一つ、前提として知っておいてほしいことがあります。いま、あなたは少数派ではありません。厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査(令和7年10月1日現在・2026年7月31日公表)で、男性の育児休業取得率は50.9%。前年度の40.5%から10ポイント以上上がり、初めて5割を超えました。

「うちの会社では前例がない」は事実かもしれませんが、「世の中で珍しい」はもう事実ではありません。切り出す前に、この数字だけは頭に入れておいてください。声の大きさが少し変わります。

タイミング——法定期限は「最遅の日」でしかない

まず期限の事実関係を、正確に置きます。

制度申出期限(法律上の原則)補足
育児休業休業開始予定日の1か月前まで1歳以降の育児休業は2週間前まで
産後パパ育休(出生時育児休業)休業開始予定日の2週間前まで労使協定を結んでいる職場では、最大1か月前までに変更されている場合がある

出典は厚生労働省の育児休業制度特設サイトです(2026年8月30日確認)。

ここで大事なのは、この期限は「これより後に言われたら会社が調整しきれない」という下限であって、あなたが目指すべき日ではないことです。

受ける側の実感で言うと、理想は「3か月前」、現実的な合格ラインは「2か月前」です。期限どおりの1か月前でも法的には問題ありませんが、そこから後任を決めて、引き継いで、取引先に顔をつないで——となると、時間が足りません。足りないぶんは、たいてい「期間を短くできない?」という交渉になって返ってきます。

いつ切り出すか、時系列で決める

双子の妊娠は、経過によって出産が前倒しになることがあります。だから「予定日から逆算」ではなく、「妊娠が分かった時点から前倒し」で組むのが安全です。

時期やること
妊娠が分かった直後自分だけで制度を調べる。夫婦で「どの時期に、どれくらい」の第一案を作る
安定期に入ったころ直属の上司に第一報。ここが切り出しの本番
第一報の1〜2週間後引き継ぎ案を書面にして再提出。上司と期間をすり合わせる
出産の2〜3か月前人事・労務へ正式な申出。就業規則上の手続きを確認
出産の1か月前後任と一緒に取引先へ挨拶。連絡ルートを切り替える

「安定期に入ったころ」と書いたのは、妊娠を職場に伝える時期と、育休を切り出す時期を同じ場面にまとめてしまうのがいちばん自然だからです。「妻の妊娠が分かりまして」と報告して、そのまま「それで、育休のことなんですが」と続ける。この流れなら、切り出しのハードルが一段下がります。

報告と相談を別の日に分けると、二度緊張することになります。私は、まとめてしまうほうをおすすめします。

妊娠・出産の経過はご家庭ごとに違います。職場に伝える時期は、必ず妻の体調と主治医の説明を優先して決めてください。ここに書いたのは、あくまで職場側の段取りから見た目安です。

相手——人事より先に、直属の上司へ

順番を間違える人が、そこそこいます。

制度のことを聞きたいからと、先に人事へ問い合わせる。あるいは「上司に言いにくいから」と、人事から上司に伝わることを期待する。これは、ほぼ確実に上司の心証を悪くします。

理由は単純です。実際に穴を埋めるのは上司だからです。人事は制度の窓口ですが、あなたの担当をどうするか、誰に振るか、数字をどう組み直すかを決めるのは直属の上司です。その人が、自分の部下の話を人事経由で知るという形は、避けたほうがいい。

正しい順番はこうです。

  1. 直属の上司——第一報と、期間・引き継ぎ案の相談
  2. 人事・労務——正式な手続き、就業規則、給付金の実務
  3. チームのメンバー・取引先——上司と決めた内容を、決まった順で

上司が話を聞いてくれない、あるいは明らかに取得を止めにきた場合は、そこで初めて人事へ上げます。順番を飛ばすのは、飛ばす理由ができてからで十分です。

なお、上司が2人いる(直属とその上)という職場もあります。その場合は直属から。直属を飛ばして部長に話す形は、あなたが将来困ります。

伝え方——「取れますか」と聞かない

ここが、この記事のいちばんの山場です。

多くの人が、最初の一言をこう言います。

「あの、うちの会社って育休は取れるんでしょうか」
「取れたらいいなと思ってるんですが、どうですかね」

気持ちは分かります。角を立てたくない。断られたときに傷つきたくない。だから、疑問形にして相手にボールを預けてしまう。

でも、これはいちばん流されやすい形です。「取れますか」と聞かれた上司は「まあ、制度上はね」と答えます。そして話はそこで止まります。あなたは「いちおう相談した」という気分になり、上司は「まだ決まっていない話」として処理する。数か月後、双方が「あれ、どうなってたっけ」となる。

受ける側として言えば、疑問形で始まった相談は、記憶に残りません。予定として頭に入らないからです。

代わりに、こう言う

「ご報告があります。妻の妊娠が分かりまして、双子でした。予定日は◯月です。

それで、◯月から◯週間、育児休業を取らせていただきたいと考えています。産後がかなり大変になる見込みなので、そこに合わせたいと思っています。

引き継ぎの案は、こちらでたたき台を作ってきました。◯◯社と◯◯社は◯◯さんにお願いできればと考えていて、◯◯の案件は休業前に区切りをつけます。ご相談させてください」

違いは3つです。

  • 期間を自分から出している——「取れますか」ではなく「この期間で考えています」
  • 理由が家庭の事情として具体的——産後に合わせる、という一点だけでいい
  • 引き継ぎ案を持ってきている——相手の仕事を、先に半分やっている

3つ目が決定的です。上司が最初に頭の中で計算するのは、「休むこと」ではなく「穴をどう埋めるか」です。その計算のたたき台を持ってきた部下に対して、拒否から入る上司はほとんどいません。ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

言い切ることを怖がらない

「◯週間取らせていただきたい」と言い切るのが怖い、という気持ちは分かります。断られたら、と思うからです。

でも、希望を言わないと交渉は始まりません。営業でも同じで、金額を言わずに「ご検討ください」と置いてくる提案は、検討されません。

言い切ったうえで、最後に「ご相談させてください」で終える。希望は明確に、姿勢は相談ベースで。この組み合わせが、いちばん通りやすい形です。

申請を受ける側の本音——助かる言われ方と、困る言われ方

ここからは、机の反対側の話です。特定の誰かの話ではなく、管理職として何度か経験したことの、一般的な整理として書きます。

論点困る言われ方助かる言われ方
時期「来月から休みます」「まだ確定ではないんですが、◯月ごろを考えています」
期間「しばらく休みます」「◯月◯日から◯週間で考えています」
引き継ぎ「引き継ぎ書は作ります」「引き継ぎ案です。ここだけ判断をお願いします」
温度「権利なので取ります」「ご迷惑をおかけしますが、段取りは組んできました」
連絡「何かあったら電話ください」「休業中の連絡先は◯◯さんに一本化させてください」
確度「取れたら取ります」「取る前提で動きます。時期だけ相談させてください」

いちばん困るのは、やはり「直前」

これは別の記事にも書いたので繰り返しになりますが、大事なので一度だけ書きます。

困るのは「3か月休みます」ではありません。「来月から休みます」です。期間の長さは、時間さえあれば設計できます。時間がないと、どんなに短い休みでも設計できません。

だから私は、部下には「取るかどうか迷っている段階」で言ってほしいと思っています。決まってから、でなくていい。「まだ夫婦で相談中なんですが」という前置きがついた相談を、迷惑だと思ったことは一度もありません。

「権利なので」から入らないほうがいい理由

これは価値観の話ではなく、実務の話です。

育休が権利であることは間違いありません。育児・介護休業法に基づく制度で、会社に許可をもらうものではない。そのとおりです。

ただ、最初の一言を「権利なので取ります」にすると、その先の交渉材料が全部なくなります。時期をずらしてほしい、この案件だけは区切りをつけてほしい、といった相談が、こちらから言い出しにくくなる。結果として、あなたにとって都合の悪い形で決まることがあります。

権利であることは、最後まで手札として持っておく。渋られたときに静かに出す。この順番が、いちばん実利があります。出し方は後述します。

もう一つ、上司側の事情を書いておく

正直に書きます。育休で職場が回らなくなるとしたら、原因は育休ではありません。その業務が1人にしか分からない状態のまま放置されていたことが原因です。育休は、それを可視化する引き金にすぎない。

これは管理職側の課題であって、休む本人が背負う話ではないと私は考えています。ただ、そう考えていない上司も世の中にはいます。だから、引き継ぎ案を持っていくことは「本来やらなくていい配慮」だけれど、実利としてはいちばん効く——という、ややねじれた結論になります。

引き継ぎ案テンプレ——業務を3つに仕分ける

では、その引き継ぎ案をどう作るか。難しく考える必要はありません。自分の仕事を全部書き出して、3つに分けるだけです。

①止める——休業期間中は、やらなくても回るもの
②任せる——誰かに渡すもの。渡す相手と、渡す範囲を書く
③自分で残す——休業前に片づけるか、復帰後に持ち越すもの

この3分類が効くのは、上司の判断コストをほぼゼロにするからです。上司がやるべきことが「②の割り振り先を承認する」だけになります。

書き出し方の手順

  1. 1週間ぶんの自分の動きを、思いつくまま書き出す。日次・週次・月次でやっていること、定例、報告、承認、問い合わせ対応まで
  2. 抜けやすいのは「暗黙の仕事」です。あの取引先の担当は自分しか知らない、あの資料は自分しか更新していない、あの人からの電話は自分にしか来ない。ここを書き出せるかで、引き継ぎの質が決まります
  3. 書き出したものに、①②③の印をつける
  4. ②には、渡す相手の候補を自分で書く。「◯◯さんにお願いできれば」まで書いてしまう
  5. ③には、いつまでに片づけるかの日付を書く

1枚メモの形

紙1枚に収めるのがコツです。長い資料は読まれません。

業務分類引き継ぎ先備考
◯◯社の定期訪問任せる◯◯さん月1回。担当者は◯◯部長
月次の◯◯集計任せる◯◯さん手順書を作成済み
◯◯の改善提案止める—復帰後に再開
◯◯案件の見積自分で残す—◯月◯日までに提出して区切る
週次の◯◯会議止める—議事録の共有のみ継続

この表を持って行くと、話が「取らせるかどうか」から「この割り振りでいいか」に一段上がります。議題がずれるだけで、結論はほぼ決まったようなものです。

連絡ルートを、必ず1行入れる

引き継ぎ案に必ず入れてほしいのが、休業中の連絡ルートです。

「何かあったら連絡ください」と言い残して休むと、本当に連絡が来ます。家にいるのに心はずっと職場にある、という最悪の形になります。私自身、双子が生まれたその日に会社の現場トラブルで部下から電話がかかってきて、思わず「それどころじゃねえ!」と返したことがあります(その日の話はこちら)。出産当日ですら、段取りをしていなければ仕事は追いかけてきます。

だから、こう書いておく。

「休業中の窓口は◯◯さんに一本化させてください。緊急時のみ、◯◯さんから私に連絡という形にしていただけると助かります」

「一切連絡するな」ではなく「一段クッションを置く」形にすると、上司も受け入れやすくなります。別の記事でも同じことを書きましたが、育休を取るというのは、休暇を申請することではなく、連絡が来ない状態を事前に作っておくことです。

渋られたときの返し方——3段階で、静かに

ここからは、うまくいかなかった場合の話です。

「今は無理だ」「前例がない」「もう少し短くできないか」。こういう反応が返ってきたとき、その場で言い返す必要はありません。段階を踏むと、たいていの場合は角を立てずに前へ進みます。

第1段階——「無理」の中身を1つに絞ってもらう

「無理」という言葉には、いくつも中身が混ざっています。人手なのか、時期なのか、前例なのか、あるいは上司自身がその上に説明できないのか。混ざったままだと返しようがありません。

「承知しました。いちばん引っかかっているのは、人の手当てでしょうか。それとも時期でしょうか。そこが分かれば、案を作り直してきます」

これは営業の基本と同じです。「検討します」で終わらせず、何が障害かを1つに特定する。特定できれば、たいていは解けます。

  • 人手なら → 分割取得を提案する。産後パパ育休は出生後8週間以内に通算4週間(28日)まで、2回に分けて取得できます。育児休業も2回まで分割できます。「4週間まるごと消える」ではなく「2週間×2回」という設計を出せます
  • 時期なら → 繁忙期を外した案を作り直す。ただし産後の山からは外さない
  • 前例なら → 話す相手を人事・労務に切り替える。就業規則に書いていないことは、取れない理由になりません

第2段階——会社側の義務を、事実として置く

ここで初めて、制度の話を出します。責める形ではなく、「そういう決まりになっているそうです」と共有する形にするのがコツです。

事実は3つあります。

(1)会社には、個別に周知して意向を確認する義務があります 2022年4月1日から、労働者が妊娠・出産を申し出た場合、事業主は育児休業制度等について個別に周知し、取得の意向を確認する措置を講じなければならないことになっています。周知すべき事項は、育児休業・産後パパ育休に関する制度、申出先、育児休業給付に関すること、休業期間中の社会保険料の取扱いの4点。方法は面談、書面交付、ファクス、電子メール等のいずれかです。そして厚生労働省は、取得を控えさせるような形での周知・意向確認は認められないと明記しています。

(2)申出や取得を理由とする不利益な取扱いは禁止されています 育児・介護休業法第10条ほかにより、育児休業や産後パパ育休の申出をしたこと、取得したことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをすることは禁止されています。

(3)2025年10月から、意向を聴く場面がさらに増えました 妊娠・出産の申出時と、子が3歳になる前に、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮が事業主の義務になっています。

これを、どう口に出すか。私なら、こう言います。

「調べていたら、妊娠を申し出た社員には、会社から制度の説明と意向確認をすることになっていると厚生労働省の資料にありました。手続きの流れが分からないので、人事にも一度確認していいでしょうか」

上司を責めていません。「決まりがあるらしい」「手続きを確認したい」という形にして、人事へ話を広げる許可を取っている。これなら関係は壊れません。そして、人事が入った時点で、話はほぼ動きます。

第3段階——社外の窓口

明らかな取得妨害や不利益な扱いがある場合は、各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談を受け付けています。ここまで来るケースは多くありませんが、逃げ場があると知っているだけで、第1段階と第2段階の話し方が落ち着きます。

順番を守ってください。いきなり第3段階に行くと、話が「労務問題」になります。あなたが望んでいるのは勝つことではなく、休むことです。目的から逆算すると、第1段階で解けるのがいちばん得です。

双子家庭には、いちばん強いカードがあります

ここからは双子の話です。

管理職として率直に言います。「双子なんです」の一言は、想像以上に強いです。

なぜかと言えば、聞いた側が具体的に想像できるからです。「子どもが生まれるので休みたい」は、人によって重さの受け取り方が違います。ところが「双子です」と言われると、たいていの人が一瞬止まって、「それは大変だ」と言います。説明が要らない。ここが決定的に違います。

実際、双子の産後は「あったら助かる」ではなく「ないと物理的に回らない」に近い状況です。授乳・おむつ・抱っこがほぼ同時に2人分発生して、人間の手は2本しかない。片方が寝たと思ったら、もう片方が泣く。それが24時間続きます(実際の回し方は双子ワンオペの1日スケジュールに書きました)。

我が家は帝王切開でした。母体は手術後の回復途中、新生児は2人という構図です。後年、双子の喘息で入院に付き添ったときも意識が飛びそうなほどきつく、手伝いに来てくれたおばあちゃんは抱っこの繰り返しで腱鞘炎になりました。大人が3人がかりでも足りない場面がある。それが双子です。

だから、切り出すときに「双子です」は最初の3秒で言ってください。遠慮して後半に回さない。相手の理解の土台を、いちばん最初に作る言葉です。

「ご報告があります。妻の妊娠が分かりまして、双子でした」

——この一文だけで、上司の頭の中の前提が変わります。そのあとに期間と引き継ぎ案を出す。順番はこれが最強です。

ただし、制度上の残念な事実も一緒に覚えておいてください。双子でも育休の期間は2人分にはなりません。育児休業は「子1人につき」で子の年齢を基準にした制度なので、同時に生まれた双子の場合、取得できる期間は単胎と同じ——というのが制度の取り扱いです(細かい運用は勤務先の人事や労働局でご確認ください)。作業量は2倍でも、休める長さは同じ。

だから双子家庭は、長さではなく「どの時期に、誰と重ねるか」の設計勝負になります。組み方は双子のパパ育休はいつ・どれくらい取る?にまとめました。切り出す前に、この設計を作ってから行ってください。設計があるかどうかは、話し始めて30秒で伝わります。

切り出したあと、必ずやる3つのこと

第一報がうまくいっても、そこで終わりではありません。ここから先で崩れる人がいます。

1. その日のうちに、文字にして送る 口頭で話した内容を、その日のうちにメッセージか電子メールで送ります。「本日ご相談した件、◯月から◯週間で考えております。引き継ぎ案は改めてお持ちします」の3行でいい。記録に残った瞬間、それは「予定」になります。口頭だけの相談は、忙しい上司の頭からは消えます。

2. 2週間以内に、引き継ぎ案を紙で出す 第一報で口頭のたたき台を出していても、必ず紙にして再提出します。ここで前述の1枚メモが効きます。上司が自分の上司に説明するときに、そのまま使える形にしておくと、なお通りやすい。

3. 数字と期日を、途中で1回すり合わせる 出産の1〜2か月前に、もう一度だけ短い時間をもらいます。「予定に変更はありません」の確認だけでも構いません。放置された予定は、忘れられるか、後ろにずらされます。営業の案件管理と同じで、途中の接触が結果を決めます。

なお、出産が予定より早まることは双子では珍しくありません。すり合わせのときに「前倒しになった場合の連絡方法」を決めておくと、当日が楽になります。妊娠が分かった段階でやることの全体像は、双子の妊娠がわかった夫がやることリストにまとめました。

よくある質問

Q1. 妊娠が分かってすぐ言うと、早すぎませんか?

早すぎることは、実務上ほぼありません。むしろ受ける側は助かります。ただ、妊娠の経過はご家庭ごとに違うので、いつ職場に伝えるかは妻の体調と主治医の説明を優先して決めてください。目安としては、妊娠を職場に報告する場面で育休の話も一緒にする形がいちばん自然です。「まだ確定ではないんですが」という前置きをつければ、早めの共有はマイナスになりません。

Q2. 法律の期限ぎりぎりで言ったら、断られますか?

申出期限を守っていれば、期限を理由に拒否されるものではありません。育児休業は原則1か月前まで、産後パパ育休は原則2週間前まで(労使協定がある職場では最大1か月前までに変更されている場合があります)。ただし、期限ぎりぎりの申出は「期間を短くできないか」という交渉になりやすいというのが実務の感覚です。権利として通すことと、希望どおりの形で取ることは別の話です。個別の可否は勤務先の人事・労務にご確認ください。

Q3. 上司に「前例がない」と言われました。どうすれば?

話す相手を変えてください。就業規則に書いていないことは、取れない理由にはなりません。育児・介護休業法に基づく制度なので、規定の整備が追いついていないだけの会社は現実に存在します。この場合の相手は直属の上司ではなく、人事・労務です。上司を飛ばす形にしないために、「手続きの流れを人事に確認していいでしょうか」と一言断ってから動くと、関係が壊れません。それでも進まない場合は、各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談窓口になっています。

Q4. 上司が何も聞いてくれません。こちらから言うしかないですか?

会社側にも義務があります。2022年4月から、労働者が妊娠・出産を申し出た場合、事業主は育児休業制度等の個別の周知と、取得意向の確認を行わなければならないことになっています。周知事項は制度・申出先・育児休業給付・社会保険料の取扱いの4点です。ただし現実には、令和7年度雇用均等基本調査で個別の意向確認を行っている事業所は76.9%。約23%は行っていません。4〜5事業所に1つは、会社から聞いてくれない計算になります。待ちの姿勢だけでは進まない可能性があるので、こちらから切り出すのが現実的です。

Q5. 「取ったら評価が下がる」と遠回しに言われました

育児休業や産後パパ育休の申出・取得を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、育児・介護休業法で禁止されています。ただし、実際の評価運用は会社ごとに違うので、この記事で「絶対に下がらない」と書くことはできません。参考までに、令和7年度雇用均等基本調査では、育児休業を終えて復職予定だった男性の98.1%が実際に復職しています。気になる発言があった場合は、いつ・誰が・どう言ったかを記録に残したうえで、人事または都道府県労働局の窓口へご相談ください。

Q6. 双子だと言えば、期間は長く取れますか?

期間は長くなりません。育児休業は「子1人につき」で子の年齢を基準にした制度なので、同時に生まれた双子でも取得できる期間は単胎と同じ——というのが制度の取り扱いです。ただ、職場の理解を得るという意味では、双子であることは非常に強い材料です。長さで勝負するのではなく、産後パパ育休(出生後8週間以内に通算4週間・2回分割可)と育児休業(2回分割可)をどう重ねるかの設計で勝負してください。

まとめ:切り出し方は、才能ではなく型

  • 黄金パターンは「安定期に、直属の上司に、期間と引き継ぎ案をセットで」。この3点で話は進む
  • 法定の申出期限は育児休業が原則1か月前、産後パパ育休が原則2週間前。ただしこれは最遅の日。実務の合格ラインは2か月前、理想は3か月前
  • 順番は直属の上司 → 人事 → チーム・取引先。人事を先にすると心証を損ねる
  • 「取れますか」と聞かない。「◯週間で考えています。引き継ぎ案はこちらです」と言い切る
  • 引き継ぎ案は「止める・任せる・自分で残す」の3分類を紙1枚で。上司の判断を1つに減らす
  • 休業中の連絡ルートを一本化する一文を必ず入れる
  • 渋られたら①「無理」の中身を1つに絞る ②会社側の義務を事実として共有する ③労働局の窓口の順で。順番を飛ばさない
  • 双子家庭は「双子です」を最初の3秒で。ただし期間は2倍にならないので、重ね方の設計を持っていく

育休を切り出せるかどうかは、勇気の量では決まりません。台本を持っているかどうかで決まります。そして台本は、この記事のとおりに作れば1時間でできます。

机の反対側に座ってきた立場から、最後にもう一度だけ書きます。早く言ってくれた部下の希望が通らなかったことは、記憶にありません。段取りは、時間さえあれば組めるからです。焦らず、でも先送りせず、マイペースにいきましょう。

※本記事は2026年8月時点の情報です。育児休業と給付金は改正の多い分野です。取得可否・期間・手続きの最終確認は、勤務先の人事労務、ハローワーク、各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へお願いします。

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出典

  • 厚生労働省「育児休業制度特設サイト 育児休業」(育児休業の申出期限=休業開始予定日の1か月前まで〈1歳以降の育児休業は2週間前まで〉、対象期間=原則子が1歳に達するまで・最長2歳まで、分割=子1人につき原則2回。妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知および育児休業・産後パパ育休の取得意向の確認が事業主の義務であること。2026年8月30日確認) https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/childcare/
  • 厚生労働省「育児休業制度特設サイト 産後パパ育休」(対象期間=出生後8週間以内、取得可能日数=通算4週間〈28日〉まで、分割=子1人につき2回、申出期限=休業開始予定日の2週間前まで〈労使協定締結時は最大1か月前〉、休業中の就業は労使協定で定めた場合のみ一定条件下で可。2026年8月30日確認) https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/paternity/
  • 厚生労働省 和歌山労働局「個別の制度周知・休業取得意向確認と雇用環境整備の措置等」(令和4年4月施行。周知事項=①育児休業・出生時育児休業に関する制度 ②申出先 ③育児休業給付に関すること ④社会保険料の取扱い。方法=面談・書面交付・ファクス・電子メール等。取得を控えさせるような個別周知と意向確認は認められない旨。2026年8月30日確認) https://jsite.mhlw.go.jp/wakayama-roudoukyoku/newpage_00634.html
  • 厚生労働省リーフレット「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和4年4月1日施行分)」(雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化。2026年8月30日確認) https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf
  • 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(令和7年12月作成。不利益取扱いの禁止〈第10条ほか〉=育児休業・産後パパ育休等の申出をしたこと、取得したこと等を理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止を掲載。2026年8月30日確認) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103504.html
  • 厚生労働省「育児・介護休業法について」(令和7年10月1日施行分=柔軟な働き方を実現するための措置等の義務化、妊娠・出産の申出時および子が3歳になる前の個別の意向聴取・配慮の義務化。2026年8月30日確認) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
  • 厚生労働省 イクメンプロジェクト「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法 改正ポイントのご案内」(令和6年改正の内容。子の看護等休暇の見直し・所定外労働の制限の対象拡大・育児休業取得状況の公表義務の300人超企業への拡大は「令和7年4月1日施行」と明記。柔軟な働き方を実現するための措置等および個別の意向聴取・配慮は同ページでは「公布後1年6か月以内の政令で定める日」と表記〈その後、令和7年10月1日施行として確定〉。2026年8月30日確認) https://ikumen-project.mhlw.go.jp/kaisei_point/
  • 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(令和7年10月1日現在・2026年7月31日公表。事業所調査 第12表 育児休業者割合〈男性50.9%〉、第7表 個別の意向確認の実施状況〈行っている76.9%・行っていない23.0%〉、第15表 育児休業終了後の復職者及び退職者割合〈男性の復職98.1%〉。2026年8月30日確認) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r07.html
  • 厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」(雇用環境・均等部〈室〉を含む相談窓口。2026年8月30日確認) https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/

筆者は、一卵性双生児のサクラとモモを9歳まで育てている現役の双子パパ部長(営業部長)です。本記事は、育児休業を上司に切り出す際の進め方について、厚生労働省の一次情報と、育休申請を受ける管理職としての一般的な経験をもとにまとめたものです。職場の運用・就業規則・評価の扱いは会社ごとに大きく異なるため、断定できない部分は「場合がある」「可能性がある」として正直に書いています。最終的な取得可否と手続きは、勤務先の人事労務・ハローワーク・各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にご確認ください。

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双子パパ部長

一卵性双生児の父。サラリーマン営業部長として働きながら双子育児に奮闘中。 双子ならではの「3倍の喜び・2倍の大変さ」をリアルに発信しています。

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